教員であるか、家族が通っていなければ、通級指導教室の存在を知っている方はほとんどいないのではないでしょうかね。
令和元年度、文部科学省が行った調査によると、国公私立小学校、中学校及び高等学校の通級に通う児童生徒数は134,185名にのぼります。
10年前(H21年度)は、54,021名だったのに対して約2.5倍となり、年々需要が高くなっているのが現状です。
そんなに急激に増えているんですね!
通級の教員も身近に増えてきた実感があるもんね!
では実際、通級指導教室ではどのような子どもたちが、どのような目的で通い、どのような学習をしているのでしょうか。
今回は、通級指導教室について特別支援学級との違いやメリット・デメリットをご紹介します。
この記事はこんな方におすすめ
・ひよっこのみなさん
・通級指導教室についてあまり知らない
通級指導教室とは?
まず、通級指導教室がどのようなところかを、もう少し具体的に示します。
通級指導教室では、言語障害や難聴、自閉症をはじめるとする発達障害等がある児童生徒が、学習又は生活上の困難を改善し自立を促すために必要な指導を受けることを目的としています。
通う教室と書くだけに、数か所の学校内に設置された通級に各学校の児童・生徒が通ってくるのです。
とりあえず、通級指導教室による指導の法的根拠となる学校教育法施工規則第140条及び141条を確認しておいてください。
第140 条 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校において、次の各号のいずれかに該当する児童又は生徒(特別支援学級の児童及び生徒を除く。)のうち当該障害に応じた特別の指導を行う必要があるものを教育する場合には、文部科学大臣が別に定めるところにより、第50 条第1 項(第79 条の6 第1 項において準用する場合を含む。)、第51 条、第52 条(第79 条の6 第1 項において準用する場合を含む。)、第52 条の3、第72 条(第79 条の6 第2 項及び第108 条第1 項において準用する場合を含む。)、第73 条、第74 条(第79 条の6 第2 項及び第108 条第1 項において準用する場合を含む。)、第74 条の3、第76 条、第79 条の5(第79 条の12 において準用する場合を含む。)、第83 条及び第84 条(第108 条第2 項において準用する場合を含む。)並びに第107 条(第117 条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、特別の教育課程によることができる。
一 言語障害者
二 自閉症者
三 情緒障害者
四 弱視者
五 難聴者
六 学習障害者
七 注意欠陥多動性障害者
八 その他障害のある者で、この条の規定により特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの
引用:「障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A(改訂第3版)」(文部科学省 編著)より抜粋
第141 条 前条の規定により特別の教育課程による場合においては、校長は、児童又は生徒が、当該小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校の設置者の定めるところにより他の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は特別支援学校の小学部、中学部若しくは高等部において受けた授業を、当該小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校において受けた当該特別の教育課程に係る授業とみなすことができる。
引用:「障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A(改訂第3版)」(文部科学省 編著)より抜粋
もう、法律とか見たくないっすよ!
通級指導教室での指導
通級指導教室での指導によく取り入れられるものの1つに、ソーシャルスキルトレーニング(以下、SST)があります。
たとえば、「友人から借りているペンを失くしてしまったとき、どうする?」といった、実際に起こりうる場面を想定し、相手の思いに配慮しつつどのように対応するかを考えるワークです。
このような活動は、人との関わりの中で必要な技術・能力を伸ばすことを目的とします。
発達障害がある子どもたちにとって、この社会性というのは非常に壮大なテーマであり、生きにくさを感じている要因そのものというパターンも少なくありません。
SSTを通して改めて学習をし、日常生活に生かすことができるように支援しているのです。
他にも、眼球運動や図・文字の捉え方等の視覚認知にアプローチした指導や、数の概念、漢字の読み書きの指導等の学習への課題改善・解決に向けた指導も取り入れられています。
通級指導教室と特別支援学級との違い
通級指導教室と特別支援学級との違いを考える上でのポイントは、大きく分けて3つあります。
①障害種
②教育課程(カリキュラム)
③在籍
障害種
通級指導教室では、視覚障害、肢体不自由、自閉症、聴覚障害、病弱、身体虚弱、学習障害、言語障害、情緒障害、注意欠陥多動性障害など、多種多様な障害種に対応しています。
一方、特別支援学級では、弱視、難聴、肢体不自由、虚弱、言語障害、自閉症、情緒障害、知的障害など、特定の障害に特化した指導が行われる場合が多いです。
教育課程(カリキュラム)
通級指導教室は、通常の教育課程に加え、または一部替えて特別な教育課程を編成します。
こちらは、個々の子どものニーズに合わせて柔軟にカリキュラムが組まれることが一般的です。
対照的に、特別支援学級は基本的に小・中学校の学習指導要領に基づきますが、特別支援学校の指導要領を参考にして編成することも可能です。
在籍
通級指導教室の場合、子どもは基本的に在籍校の通常学級に所属しており、特定の時間だけ特別な指導を受けに行きます。
一方で、特別支援学級では、子どもはその特別支援学級に完全に所属し、一日の大部分をそこで過ごします。
通級指導教室 | 特別支援学級 | |
障害種 | 視覚障害・肢体不自由・自閉症・聴覚障害・病弱・身体虚弱・学習障害・言語障害・情緒障害・注意欠陥多動性障害 | 弱視、難聴、肢体不自由、(病弱)虚弱、言語障害、自閉症・情緒障害、知的障害 |
教育課程 (カリキュラム) | 通常の教育課程に加え(または一部替えて)特別な教育課程を編成 | 基本的に小・中学校の学習指導要領に基づく。(特別支援学校の指導要領を参考にし、編成可能) |
在籍 | 在籍校の通常学級 | 特別支援学級 |
通級指導教室に通うメリット・デメリット
通級指導教室に通うメリット
・一対一ないしは少人数で個々の特性に応じた指導を受けることができる
・ソーシャルスキルを伸ばすことができる
・他校の児童生徒とも交流ができる
・日常から離れることができ、リフレッシュになる
通級指導教室に通うデメリット
・在籍校の授業に出席できないため、補填が必要
・徒歩もしくは公共交通機関を使っての通学となる
・地域によっての指導・制度に差異がある
特別支援学級に通うメリット・デメリット
特別支援学級に通うメリット
・基本的に学区内での通学ができる
・学習面でも手厚くサポートしてくれる
・安心して一人ひとりのペースで学習ができる
特別支援学級に通うデメリット
・他の児童生徒から偏見を持たれる場合がある
・担当の全教員が専門性が高いとは限らない
・内申点がつかないので、進路が限られる場合がある
通級指導教室の利用方法
通級指導教室は特別な教育ニーズを持つ子どもたちに対して、個別または少人数での指導を行う場所です。
ここでは、一般的な通級指導教室の利用方法について解説します。
初めての相談先
利用を始めるには、まず特別支援教育センターや教育委員会に相談が必要です。
未就学児の場合、申込書を郵送することで初めてのステップを踏みます。
すでに学校に通っている児童・生徒の場合、担任教師や学校の特別支援コーディネーター担当教師を通して手続きが進められます。
相談内容
特別支援教育センターでの相談では、保護者と、場合によっては子どもが同伴して、家庭での状況や気になる点を共有します。
生育歴や通院歴も参考にされることが多いです。
この相談を基に、通級指導教室への入級が必要かどうかが審議されます。
利用開始時期
利用が認められると、多くの場合、翌年度からの通級が開始されます。
ただし、通級開始時期は自治体や状況によって異なる場合もあります。
自治体ごとの情報の調べ方
通級指導教室に関する情報は、インターネットで自治体名と「通級指導教室」をキーワードに検索すると、多くの場合、教育委員会のページなどが見つかります。
情報が見つからない場合や、インターネットを使用しない場合は、最寄りの学校や教育委員会に直接問い合わせる方法もあります。
学校での相談
既に学校に通っている場合、担任教師に相談するのも一つの手段です。担任教師は子どもの学校での状況をよく知っているため、的確なアドバイスが期待できます。ただし、学校に相談したくない場合は、教育委員会の特別支援に関する部署への問い合わせが確実です。
通級指導教室によくある質問
通級指導教室とは何か、どのように利用するのか、多くの保護者や教育関係者が疑問に思うことがあるでしょう。
以下では、通級指導教室に関するよくある質問とその回答を紹介します。
教室の場所は?
通級指導教室は多くの場合、小学校や中学校の敷地内に設置されています。
一部の自治体では特別支援学校や教育センター内にも存在する場合があります。
教室の選び方は?
通級指導教室は基本的に担当校が決まっており、利用者側からの指定は通常できません。
最も近い教室が指定されることが多いため、詳細は教育委員会や特別支援コーディネーター担当教師に確認が必要です。
利用に費用はかかる?
通級指導教室の授業自体は無料です。
ただし、教材費など別途費用がかかる場合もありえます。
授業を抜ける場合、補習は?
通級指導教室に通う際に授業を抜ける必要がある場合、担任教師はその事情を理解しています。
ただし、補習が必ず行われるわけではないので、確認が必要です。
遅刻や早退扱いになる?
通級指導教室での活動は通常の授業の一部とされているため、遅刻や早退扱いには基本的になりません。
利用できる時間は?
利用可能な時間は、子どもの障害の程度や通級指導教室の状況に応じて変わることがあります。
具体的な曜日や時間帯は、事前に相談することが多いです。
通級指導教室のまとめ
以上で通級指導教室についてご紹介してきましたがいかがだったでしょうか。
今後もずっと増えていきそうですよね!
もちろん、どんどん教員の方も対応していかないといけないね!
今後も特別な指導への需要の増加に伴い、通級指導教室の仕組みや制度は少しずつ変革していくことでしょう。
生きづらさを感じる子どもたちにとって、人との関わりを避けては通れない学校という場は、言わば生き地獄のようなものかもしれません。
また、子ども自身だけでなくその保護者の方にとっても、非常に辛辣な状況があるはずです。
ただ現代は、通級指導教室のような子どもが特別な指導を受ける機会が設けられているのです。
大切なことは、多くの選択肢を子どもと一緒に考えていくことではないでしょうか。
にほんブログ村のランキングに参加しています!
こちらからひよっこ教員向上委員会の順位が確認できますのでご興味があればぜひクリックしてみてください!
コメント